2018年本屋大賞『かがみの孤城』を読んでみた

  • 2018年本屋大賞受賞
  • テレビ番組 王様のブランチ ブランチブック大賞2017
  • 雑誌 ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2017 第一位

アマゾンのレビューにおいても、80%以上の方々が5つ星または4つ星と、絶賛の嵐です。辻村深月氏の作品はこれまで読んだことがない僕でしたが、これはぜひとも読んでみたいと思い手に取ってみました。

完成度の高いエンターテイメントだと思います。

ファンタジーでありながら、謎解きミステリー的でもあるというのは、いかようにも世界を設定できるという点で、あまり相性がよいと思えないのですが、絶妙に張り巡らされる伏線は、終盤に向けてしっかりと回収、ストーリーは見事に大団円へと導かれます。読んでいて、「ほうほう、なるほど……」とニヤつかされることも。

中学生を主人公とし、学校でのいじめが描かれているということもあり、読者の年齢層は低めかと思われますが、様々なコミュニティ(学校、家庭、会社……)と、自身の所在や寄る辺、折り合いを手さぐりしながら生きる姿が描かれていると思えば、世代を超えて訴えかけるテーマが内在されており、中高生から大人まで楽しめる内容です。

登場人物達がいきいきと、そして情景もしっかり描写されており、アニメ化や実写化といった、他のメディアへの展開の可能性も感じられる作品でした。

総じて丁寧に作られており、雑なところがありません。先が気になるストーリー展開で、ページ数が多い割には、結構速く読み終えることができました。

しかし、今一つ物語にのめり込めなかったのも事実です。

僕にとっていじめは、ある時期、とても身近な体験でした。いじめられもし、いじめもしました。個人的な体験からいうと、いじめは(親の転勤に伴う)転校、あるいは卒業といった、外部要因に引きずられた結果として解決されるものだったので、僕の体験とは違った身の処し方で、いじめに対峙する登場人物たちに、あまり親近感を感じることができませんでした。結果として、物語の伏線や仕掛けにばかり目が行ってしまい、物語に今一歩、没頭しきることができなかったように思います。

いじめというテーマに対して身構えすぎたのかもしれません。

コミュニティの大小や種類を問わず、程度の差こそあれ、いつでもどこでもいじめがあり、僕は、いじめに関わりを持たずに生きることができませんでした。いじめはこれまでもあり続けたし、これからもなくならないということは、物語の中で暗に示されているようにも思われます。

しかし、いじめられる人がいなくならなくても、いじめる人がいなくならなくても、多様なコミュニティが並在できて、そのコミュニティから果敢な一歩を踏み出そうとするとき、その手をそっと引いてくれる……そんな人がいてくれると、世の中はもう少し住みやすくなるのかなと、そんなことを考えさせられるのでした。